【宮崎県田野町 川越俊作さん 「自然栽培大根」の今】

【宮崎県田野町 川越俊作さん 「自然栽培大根」の今】  2017年1月取材

 

 

大根の一大産地として全国的に有名な宮崎県田野町。

12月には切干用大根を天日干しするための櫓が立ち並ぶこの地に、九州トップクラスの土づくりに挑む川越俊作さんはいます。

川越さんは、自然栽培普及グループ「八重桜会」を宮崎県で主宰し、自身が培われた自然栽培の思想・方法論を惜しみなくメンバーに伝えています。

今回は川越さんの自然栽培大根がいよいよ収穫を迎えるということで、熊本から車を飛ばして、スタッフ5人で畑にお邪魔しました。

 

「よく来たね~」と宮崎弁の心地よいイントネーションで私たちを迎えてくださった川越さん。大柄な体に、大きな手。

そして、メガネの奥にキラリと光る鋭い目。

一見、近寄りがたく見えますが、笑うととても優しい顔をされる男気溢れる温かい方。それが、川越俊作さんです。

漬物を仕込む加工所で少し話をした後、早速、畑へ向かいました。

今回取材した川越さんの大根畑は、車で5分程走らせところにあります。

周囲は一面の畑作地帯。ほとんどの農家さんが大根を作っているとのことで、大根の一大産地である田野町の歴史を感じます。

川越さんの大根畑に到着し、まず圧倒されるのがその美しさ。

思わず、「・・・・!!」とスタッフ一同、感嘆の声を上げました。

雑草が一本も生えておらず、収穫間近の美しく見事な大根が整然と並んでいます。

「1本抜いてみなよ。」という川越さんのお言葉に甘えて、早速抜いてみる。

「ずぼっ」と全く力を使わずに、面白い様に見事な大根が抜けました。

川越さん曰く、「土が柔らかいから手でも簡単に抜ける」とのこと。

抜いた大根は、真っすぐに伸び、ストレスなく成長していました。

そして、何よりきめが細かく、見た目が美しい。

「葉っぱが美味しいんだよね~。」ということで、葉っぱを一口むしゃり。

その甘さとみずみずしさはまるで、早摘みのリンゴを食べているかの様な美味しさです。

 

「この畑は、土づくりを始めて7年目。5年間土づくりだけをずっとやってきた。今年から作物を作り始めたけど、5年間我慢したお陰でとても順調にできている。種を蒔いたらほとんどほったらかしだよ(笑)。」

川越さんは、2007年に自然栽培に出会いました。

それまでは、長年、有機栽培に取組まれており、最初は「自然栽培ってのは、どんなもんか見てやろう」という気持ちで話を聞きに行ったと言います。

そこで、無農薬・無肥料で作られた作物を実際に目にし、その畑を訪ね、自然栽培に取組んでみようと決意。

それから、九州・宮崎の地での川越さんの挑戦が始まります。

「やるからには絶対に結果を出す。自分の中に諦めるという言葉はないんだよね。」

見よう見まねで試行錯誤しながら自然栽培に取組むも、結果が出ずに全滅の連続だったと言います。

「周囲の農家仲間からは相当笑われたよ。俊作が変なことしてるって。でも、全然気にならなかった。最初からうまくいくなんて思ってなかったからね。自分の信念を貫くだけだった。」

自分なりの仮説を立て、検証をし、また失敗し、挑戦する。

その繰り返しで自然栽培とは何かを模索していったと言います。

「迷ったときは、自然を見る。このやり方は自然か、反自然か。それを繰り返していき、今の形が出来上がってきた。答えはいつも自然の中にあるんだよ。」

川越さんは今、日本の農業に強い危機感を感じています。

「この田野町の切干大根も今後は消えていくと思う。年々、過酷な自然環境になってきている。台風・大雨・日照り・温暖化がある。慣行栽培(化学肥料・農薬を使用)でやっている農家ほど、今年は収量が大幅に落ちている。そして、年々厳しくなっていくと思う。」

自然界にはない化学肥料・農薬を大量に使用する現代の農業を続けていけば、土は汚れ、冷え、固まります。

それにより虫や病気が増えるため、更に肥料・農薬を投下し、ますます土は汚れ、冷え、固まる。

そして行き着く先は、何も育たない「不毛の土地」になると、川越さんは言います。

「今、農業を変えていかなければ本当に食べるものが作れない時代になる。それは、何十年という先ではなく、数年後に訪れるかもしれない。自分は自然栽培を継続し、広めていくことで、持続可能な農業の世界を拡げていきたい。」

そう語る川越さんは、自身で八重桜会という自然栽培普及グループを立ち上げられ、メンバーに自身の知恵と経験を惜しみなく伝えています。

「畑は自分に似るという。ごまかしが効かない。いつももっと出来るはず、という気持ちで毎日取り組んでいるよ。」

日本の農業、自然栽培の未来、会のメンバーの将来、すべてに対して全力で情熱的な川越さん。

その眼差しはどこまでも熱く、まっすぐでした。

「いつか、自然栽培を特別ではなく、当たり前の農業にしたい。肥料・農薬を使う農業の方が特別な世界にしていきたいね。」

川越さんの自然栽培に対する真摯でひたむきな取り組みは、今日も宮崎の地で続きます。

 

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