<産地の今:柑橘>熊本県水俣市 福島雄治さん  

熊本県水俣市 福島 雄治さん(ふくしま ゆうじさん)

■プロフィール

熊本県水俣市にて多品目の柑橘類を自然栽培で取り組む。環境保護を心がけ20年前から自然栽培に取組み続け、現在は自然栽培と有機栽培を実践している。長年のキャリアを活かしながら試行錯誤を続ける想い熱き生産者。

全国的に例年に比べると暖かい今年の冬、熊本県内では特産でもある柑橘類の収穫が始まる季節となりました。海風の影響で県内でも特に暖かい地域の水俣市では毎年豊富な種類の柑橘類が生産されています。そんな水俣市で自然栽培に長年取り組んでおられる福島雄治さんも多品目の柑橘類を栽培されています。これからネーブルオレンジや清見みかん、不知火、レモンなどの収穫が始まるという事で果樹園を訪問しました。

<樹齢40年の樹々を守る>

1月中旬、ピュアリィスタッフ3人で福島さんの自宅を訪れると、ちょうど出荷作業が終わるころで快くお迎えしていただきました。

作業場にはネーブルオレンジ、不知火(しらぬい)、スイートスプリング、レモン、みかん、河内晩柑などたくさんの種類の柑橘類があり、「出荷残りのキズ物ですが、食べてみてください」と福島さん。訪問して早々、お言葉に甘えて試食させていただきました。最初は少し遠慮していたスタッフですが美味しさのあまり、様々な柑橘の食べ比べをさせていただきました。どの種類もジューシーな上に、味がはっきりとしており、力強さを感じます。

柑橘の味に感動しつつ、果樹園の案内をしていただきました。まず訪れたのは清見みかんと不知火の果樹園です。10年前に福島さんが借り入れられてから無農薬で取り組み続け、5年前からは肥料も使われていません。園内にある清見みかんの樹は約40年の樹齢だそうで今年は少し収穫量が少ない様子でした。一般的に柑橘類などの果樹は1年ごとに収穫量に差が出ることが多く、収穫量が多い年を「表年」、少ない年を「裏年」などと呼び、この現象を隔年結果と言います。今年の清見みかんは「裏年」になるそうですが、福島さんは極力収穫量の差が大きくならない方法を目指しています。表年、裏年の差が大きいという事は実の成らせ過ぎで、樹に負担がかかり、次の年で樹自体が実の数を少なくする働きが起きているそうです。今年は裏年で実が少なくなっていますが、清見みかんの樹自体は葉の数が多く、とても元気な様子で、来年の実を沢山つける準備をしているようにも見えました。福島さんは表年の樹の負担を考え、より安定してバランスのとれた栽培をするために試行錯誤されています。40年もの樹齢になると大きく広がった枝は隣の樹と重なっているところもあるため、地面にはあまり日が差し込まなくなり、実も葉に隠れ日に当たっていない部分もあります。こういった状況で樹同士の間隔を広げるためには、適度に樹を切るか、樹の負担になりすぎない範囲で剪定をし日の当たる部分を作っていくか、樹の状態を細部まで見極めながら判断し実践していくそうです。「毎年実を成らしてくれていますが、自然栽培はこれからまだまだ勉強だと思っています。人にも個性がある様に、品種によって管理の仕方も様々です。よく観察し今後も実践していきたいと思います。」

長いキャリアを持ちながらも謙虚に自然と向き合う姿が印象的でした。隣にある不知火の樹は、ほど良く実がついており、今期の収穫も間もなく始まるとのことでした。

 

<苦難を乗り越えて環境都市へ>

熊本・鹿児島の県境となる水俣市。西側の八代海から吹く暖かい潮風は柑橘類をはじめ、多くの農産物を生産する自然の恵みとなっています。今では自然豊かな水俣市ですが、1956年に公式認定された“水俣病問題”を抱えた過去があり、地域全体で問題と向き合い復興を果たした環境都市でもあります。福島さんはお父様の代より水俣に移住をされたそうですが、当時は公害の抗議活動などの最盛期だったそうで、それからの水俣と共に育ってこられました。30歳の時にお父様の果樹園を引継ぎ、就農時から環境保全型の農業を実践されています。就農前に関係していた県の果樹試験場で毒劇物取扱の資格取得の勉強をきっかけに農薬の危険性を知り、就農時には農薬を使うことは選択肢になかったと仰います。また、最初に借り入れた甘夏の畑では借りる前から肥料を使っておらず、その環境を守る意味でも無肥料栽培を試みたところ農薬・肥料を使わずしても環境が整っていれば栽培ができると、その可能性を見出したそうです。今では水俣市は全国をけん引する環境都市となり、環境保全型の農業を始め自然栽培を実践する農家さんも多い地域となっています。苦難を乗り越えた地域だからこそ自然を尊重する農家さんとさらに繋がっていきたいと福島さんは仰います。また若手の農業参入など、これからの地域の課題点に目を向けられている姿を見て水俣の更なる発展を感じました。

<支えてくださるお客様を思い浮かべて>

最後に7年前から取り組んでいる自然栽培レモンの畑にお邪魔しました。国産というだけでも貴重なレモン。自然栽培ともなると畑に伺える機会はそうそうありません。3年前の猛烈な寒波で県内のレモンはほとんど枯れてしまった中で、海風に守られ寒波を耐え抜いた福島さんのレモン園。樹にはたくさんの実がなっていました。「何とかまとまった収穫の年を迎えることができました。年々成長する樹を見てホッとすると同時に、支えていただくお客様の顔が浮かびます。いろんな方に食べていただけると思うとやっぱり農薬は使えません。こだわった栽培方法ですが品質と味と、バランスよく向上していきたいと思っています。」

穏やかな表情の中に熱い芯を感じました。これからの収穫がとても楽しみです。

 

レポート 産地担当 舩水 楽

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